お菓子ど真ん中 part1 ..
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19:名無しさん@ビンキー
08/10/29 23:12:05 0

「……。」
それを布ごと俺に寄越してくるハルキ。俺は怪訝な顔をして一応受け取り、彼から送られる視線を若干うざったく感じながらも包みをするすると解いていった。
「………すげぇ」
「…ね、綺麗でしょう」
「うん。…これ何て石?」
「瑠璃、です」
「るり?」
「はい」
布に包まっていたのは銭程の大きさの丸い青い石だった。所々に白い筋が入っていて、玉の中心部分は濃い紺色をしている。それは俺の手の中で夕日を浴びて青紫色にキラキラと光っていた。
「琉球って、南の国で採れるんです。…チバさんにどうしても渡したくて」
ハルキは俯いてごく小さな声でそう言った。俺は純粋に嬉しくて一言ありがとう、と言うと石を目の上にかざして光に当てる。
半透明の石は夕刻の弱い光を内部で屈折させ緑や紫や青の筋を煌めかせていた。少しだけその光景を楽しんだ俺はまた丁寧にそれを布に包み直して懐にしまい込む。
「…あ、そうだハルキ」
ふと俺は、彼の顔をじぃ、と見つめる。ハルキが不思議そうに首を捻って俺を見返し、何ですか、と尋ね返してくる。俺は少し戸惑ってから口を開いた。
「あのさぁ、…アベ、って知ってる」
瞬間、ハルキの表情が強張る。しかしそれはほんの一瞬で、彼はまたいつも通りの淡い笑みに戻ると「知りませんよ、誰ですか?」と聞いて来た。
「…いや、知らないならいいよ。」
俺はハルキの態度に少しの疑問を抱くも深く追究はしなかった。彼もそれ以上尋ねることはせずに、仕事がまだあるのだと短く言って早々に去っていった。
(………)
いつもならもっと暗くなるまで居るハルキが、アベという名前に逃げるように帰ってしまった。俺には少なくともそう感じられて、彼にちょっとした違和感を感じる。
思考とは別に、日が足早に沈んでいく。
夜が近い。


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