もやしもんで百合 ..
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248:名無しさん@秘密の花園
09/12/09 20:13:42 gPZO3Y7y
ムトーと及川役は誰だ……
URLリンク(natalie.mu)

石川雅之「もやしもん」ノイタミナ枠で実写ドラマ化

イブニング(講談社)にて連載中、石川雅之「もやしもん」の実写ドラマ化が決定。
本日12月8日発売のイブニング2010年1号にて発表された。
2010年にフジテレビのノイタミナ枠にて放映される。

「もやしもん」は農業大学を舞台に、菌を見ることができる主人公・沢木と、
彼を取り巻く個性豊かな仲間たちの日常を描いた作品。
2007年10月に今回のドラマと同じく、フジテレビのノイタミナ枠にてTVアニメ化された。

キャストやスタッフなどドラマに関する詳細は伝えられていないが、
ノイタミナ枠初の実写ドラマとあり、注目が集まりそうだ。

249:名無しさん@秘密の花園
09/12/09 21:58:50 ZEKWtbyi
>>248
蛍役やれる俳優居るのかな?

250:名無しさん@秘密の花園
09/12/09 23:19:27 euenmOUu
スレ違だけど
・・・教授役できる人はいるんだろうか?(けっこう体当たりな役だと思うけど)


251:名無しさん@秘密の花園
09/12/10 00:19:31 KrWEZFQ6
>>249
ネギまみたいにそれっぽい女の子連れてくればおkじゃね? てか沢木くんも女の子がやればいいよ

252:名無しさん@秘密の花園
09/12/10 21:36:18 d3E0/Voo
キビヤックどうすんねんw

253:名無しさん@秘密の花園
09/12/11 21:54:15 cb0h8g/d
モザイク

254:名無しさん@秘密の花園
09/12/16 01:08:15 BvZz5wru
しかしなんだかんだ言ってもムトーの正妻は、亜矢でも及川でもなく長谷川なのだと思う。

255:名無しさん@秘密の花園
09/12/16 08:09:41 9KaymQcL
長谷川さんはムトーのご主人様だろ

256:名無しさん@秘密の花園
09/12/16 09:42:19 /pQ9Sbka
女性は人差し指と薬指の長さがほぼ同じだけど
男性ホルモンが高いと薬指が長くなるので
薬指が長い女性は同性愛の傾向がありしかも男役になる確率が高い

長谷川は爪があんなだからよくわからんが

257:名無しさん@秘密の花園
09/12/19 21:07:03 SnKgOjoW
嘘つけ

258:名無しさん@秘密の花園
09/12/19 22:30:47 A1jcLcC9
そんなもんわからねぇよ
似たような例でハゲと男性ホルモンの話がある。
家の親父は、男性ホルモンバリバリで胸毛からギャランドゥまでびっしり生え揃ってるが
70過ぎても髪は、黒々してるし、全然剥げない。
俺も毛深いけど同年代の奴らよりサラサラピカピカの髪。
リンスとかコンディショナーとか使ったことないのに女の子に羨ましがられる位の髪質だよ。
ハゲと男性ホルモンとかあんまり関係ない。
同様に同性愛者とホルモンのバランスも関係ないと思うぞ。

259:名無しさん@秘密の花園
09/12/22 07:59:40 koVcbSah
>>258
毛深くて、サラサラヘアーだと!?
どんなミラクルだ

260:名無しさん@秘密の花園
09/12/22 08:25:55 Sd83QZux
ムトーは絶対ガチレズだこれ

261:名無しさん@秘密の花園
09/12/22 13:22:12 y3lf8RMr
快楽主義者っぽいから、バイセクシャルな気がする。

262:名無しさん@秘密の花園
09/12/23 21:08:06 IinpKJJZ
つまり、あれは、媚薬だけが原因ではなかったと?
と、すれば、及川も・・・・・?

263:名無しさん@秘密の花園
09/12/23 22:21:17 egDajDWJ
というか、醗酵蔵周辺御一行は女子連中(含螢)がいい味出し過ぎてて
男子はショボイ印象しかないからな
ムトーは女子に走らざるを得ない

まあ作者に佳い男子を描く気がなきゃしょうがないんですけどねwwwww

264:名無しさん@秘密の花園
09/12/24 19:55:00 6E/hnb4y
だからってムトー、蛍に走らないでね。
蛍は、沢木の嫁だから・・・・・・

265:名無しさん@秘密の花園
09/12/24 21:47:46 333gyPpb
酒蔵の跡取りと結婚すれば美味い日本酒が只で毎日飲み放題!
とか考えてるかもw

266:名無しさん@秘密の花園
09/12/24 22:45:07 /kWCv3+T
はなちゃんと結婚すれば毎日ビール飲み放題ですよムトーさん

267:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 02:00:06 26dFGvmd
>>265
酒に加えて夜の営みもノーマルHと女装レズプレイで2倍楽しめる・・・
かなり美味しい相手なんじゃないか蛍は
ムトーは就活や進学より婚活すべき

268:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 02:01:03 jCjm/FqX
なんか方向性がおかしくなってきたな

269:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 15:11:02 ny9uwH26
最新話見て思ったんだが、
ムトーさん、ノリと快楽には流されないってことは
葉月ちゃんとのはガチってことっすね!

270:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 17:56:55 vLp6B5KX
>>269
流される、って言ってたろ?
フリーセックス宣言でしょ

271:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 19:02:56 6dnkXOvy
つまり、バイ・・と
そういや、男と付き合ってたな。
ムトー

272:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 19:52:24 ny9uwH26
>>270
あれ?長谷川さんに
ノリと快楽には流されないんで襲ってきてもいいですよ、みたいなこと言ってなかった?

273:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 21:26:30 Ken3FWny
>>272
逆らわない な

274:名無しさん@秘密の花園
09/12/25 23:20:21 vLp6B5KX
>>273
それそれ

275:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:02:33 /eL5VzHr
勘違いだったのか……orz

276:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:03:29 gVNs2wMJ
フリーダムだなあムトー

277:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:16:11 UnVr6+GB
あれ、相当問題発言のはずだけど、うっかりすると「まあムトーだし」でスルーできそうになるのが怖い。

278:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:43:39 hO8O8U9j
ミス農大で酒好きなら飲み会のお誘いも多いだろうし
その度にやりまくりってイメージが・・・
不潔設定と相まって俺的にムトー株爆下げ中

279:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:49:53 UnVr6+GB
いや、長谷川という武藤が全幅の信頼を置く相手だからこそのあの軽口だろ。うん。

280:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 00:57:32 W6X28LRu
>>278
ないな

お近づきになりたい奴はたくさんいるだろうが
どいつも勇気がなくて手が出せない
飲み会の誘いはたくさんあるだろうがムトーレベルで飲みに張り合える奴は先に潰れちゃうだろ

それでもうっかりスイッチ入っちゃうと及川食っちゃったり長谷川さんに食われちゃったりするぐらいのフリーセックスだろ

281:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 01:12:26 Cx9oBWMV
>>278
思い出せ。
元UFO研究会だぞ。
リア充だったら、あんな所入りびたらなかったろう。




282:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 02:25:18 eYIf+5iO
2巻P61とか5巻P32とか8巻P133・P136とか
ミス農大で3年生なのに男どもから呼び捨てにされてるのが堪らん
学内では尻軽ヤリマンサセ子ビッチで通ってるんじゃないかと妄想して (;´Д`)ハァハァ

ってここレズスレだった

283:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 05:12:02 OMYlkntY
>>279
だな

284:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 07:21:17 yjMmzqYu
うーん。
ビッチどころか男に捨てられた話からすると、惚れた男には、とことん尽くすタイプだと思うけどなぁ・・・
まぁ、百合的には、ムトー×及川は、ガチ
自分的妄想は、金城×ムトーだけど・・・
ボーイッシュ&スレンダー&褐色肌の女豹に蹂躙されるムトーとか想像するとたまらんなぁ・・・

285:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 14:13:35 uudOIOZW
彼氏に捨てられた理由ってやっぱ不潔だから?
臭マンなのに毎回クンニを強要とか。

つーかすっかりムトースレになっちまったな。

286:名無しさん@秘密の花園
09/12/26 21:59:26 WbLweuuC
男絡みの話はここでやるなよ

287:名無しさん@秘密の花園
09/12/27 00:13:39 YLFT3SjS
>>278
オレは寧ろムトーさんは一途だと思うけどな
好きな人と暮らすために超バイトして、その後UFO研なんてへんなサークル入っちゃうぐらいなんだぜ?
だからオレにはやりまくりってイメージは全くない。
お酒はあおりまくりだけどな


288:名無しさん@秘密の花園
09/12/27 01:08:36 4G/eNfpA
だからこそおにゃのこには垣根が低いのよ

289:名無しさん@秘密の花園
09/12/28 14:44:47 fo45pDmy
加納はなちゃん×誰でも

290:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:16:28 5po9qWVU
へたれガチレズムトー攻×誘い受及川
一人称視点交代で少しづつ進みます。
SS書くの初めてなのでいたらないですが、
読んでくださるとうれしい。



わたし、及川葉月は一大決心をした。

まだ1年生なのに研究室に通うのも葵さんに会いたいからだ。
もちろん、教授の秘蔵のワインを呑んでんでしまった負い目もあるけれど。
……そう、あのときのことが忘れられない。
何度も葵さんに名前を呼ばれて抱かれたときを。
思い出すだけで体が熱くなって目の前が赤くなる。
アパートで一人きりのときは葵さんが触ってくれたところを全部自分で触ってしまう。
それは、気持ちよくて、物足りなくて、罪の味が苦くて。
……葵さんが欲しかった。

とにかく、葵さんの声が聞きたい。
また、「葉月」と耳元でささやかれたい。
それでもあれから「及川さん」としか呼んでくれない。
ただの先輩と後輩だ。
正確に言えば、わたしはちゃんと研究室に所属しているわけじゃあないから
後輩どころかただの顔見知りでしかないのかもしれない。
あの夜のコトだって樹教授特製の媚薬のせいでしかないんだろう。

291:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:17:40 5po9qWVU
ああ、ダメだ。
悪いことばかり考えてしまう。
葵さんがわたしのことをどう思っているのか、それだけははっきりさせたい。
もちろん、わたしのことをなんとも思っていない確率が一番高いのは分かっている。
朝になって布団の上で手をついて頭を下げられ、
「ごめんなさい、なかった事に」なんて言われたんだから脈があるわけない。
それでも、スキです。
なんとか自然にあまえてすがりつこうとした腕を何度すげなく振り払われただろう。
ただ、時々、葵さんがじっとわたしを見ているような妄想に駆られるのは終わりにしたい。
同性に執着して合コンにも行けない生活はもう終わりにするんだ。

292:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:18:45 5po9qWVU

ビールを仕込むタンクを洗浄していたら、葉月が声をかけてきた。
「武藤さん、この後にバイトって入ってますか?」
「いやー、別に入っていないけど」
最近、わたしはやたらにバイトを入れるのを辞めた。
酒代はかかるけど、親に仕送りもしてもらってるし贅沢しなければ生きていける。
「ちょっと、呑みに行きませんか?」
わたしは驚きのあまり手に持っていたたわしを思い切り落としてしまった。
ここ数ヶ月、あの夜のことを忘れるのに必死だった。
葉月の白い胸、甘い声、すがるような目、誘う唇。
実験中のふとした瞬間に記憶がフラッシュバックして試料をぱーにするのもしばしばで。
わたしはあのことはなかったことにしようと決めていたし、そうお願いもした。
我ながら「ノーカンでお願いします」とか口走ったのは最低だったけど。

が、あの葉月ちゃんがわたしを飲みに誘っている!
やばい、本気でやばい。
サシ呑みなんてしたらわたしの理性が吹っ飛んでしまうではないか。
「いいい、いや、呑んでもいいけど。ああ、あと誰といくのかなー、なんて、うははは」
なんというカッコ悪さ。
かわいい年下の女の子に誘われてしどろもどろになるなんて。
「二人じゃダメですか?」
きゃー! 二人きり!!
まずい、なんとか抑止力に誰かを誘わないと手を出してしまう。
考えろ! 葵! でないと、明日はないぞ。
凍ったように考え込むわたしに追い討ちがかかる。
あの唇をきゅっとひきしめて、あのすがるような目でわたしを見る。
「いやですか?」
「……いやじゃないです」
あたし、陥落。


293:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:20:18 5po9qWVU

勇気を出して葵さんを誘ったはいいけど、わたしは飲み屋をあまり知らなかった。
知っているのは研究室のみんなと行った亜矢さんのバーと駅前のチェーンの居酒屋くらいで。
ノープランなわたしは葵さんについていくしかできなかった。
こんなときに自分が子供だと思い知らされる。
ふたつしか違わないと言えるかもしれないけれど、ハタチをはさんでのふたつ違いは大きな違いだ。
葵さんに連れてこられたバーの薄明るい照明に浮かぶ葵さんの横顔はキレイで大人っぽくて。
真っ黒な髪は薄闇に溶け込んで、アルコールでかすかに上気した滑らかなほほに手が延びそうになる。
ジンをロックでたしなむ姿はホントに大人の女だった。
タバコなんかをふかしても似合うかもしれない。
バーのほかの客が息を詰めて葵さんを見ているのが分かる。
こんなステキな人は他にはいないよ。

「……じゃない?」
「え?」
周りの様子に気をとられて上の空だった。
「来年のミス農大及川さんじゃない? って言ったのよ」
葵さんの突拍子もない発言にびっくりする。
「えええ、そ、そんなの無理ですよっ」
「そうー? いい線いってると思うんだけどなー」
葵さんは空になったグラスをカラコロならしてマスターにお代わりをねだる。
わたしだったらとっくにつぶれている量とペースだ。
「ねえ、ねえ、この子だったら次のミス農大いけると思わない?」
葵さんに肩に手を回され、ぐっと引き寄せられる。
ほほとほほが触れそうだ。
こんなに近づいたのは酒蔵のあの夜以来で……。
心臓が爆発しそうだ。
真っ赤になってうつむいてしまう。
「ああ、いいですねー。来年エントリーしたらいいと思いますよ」
ほがらかにたれ目のマスターが葵さんに同意する。
「と、と、とんでもないっ!」
思い切り葵さんのうでをふりほどき、全力で否定する。
わたしがミス農大だなんて、ありえなさすぎる。
「わかってないのは葉月だけなんだよなー」
葵さんはぶつぶつつぶやいて、ダブルどころではなくなみなみ注いだ新しいジンの海に飛び込んでいく。
わたしはぬるくなりかけたジントニックを少しすすった。

「あ、葵さん、大丈夫ですかっ」
「だーいじょーぶー」
なんと、葵さんは2時間足らずでぐだぐだに酔ってしまった。
こんな葵さんは見たことがない。
バーから歩いていける距離だというので住所を聞き出し、携帯のアプリのマップを頼りに歩いていくこと1時間。
確かにまともに歩けば10分の距離ではあった。
けど、わたしには亜矢さんみたいに葵さんをおんぶするのは無理な話で。
なかばひきずりながら歩いてきたのだ。
葵さんが住んでいるのはわたしが住んでいるのと同じような学生向けのコーポだった。
半分寝ているような葵さんの服から鍵を引きずり出す。
鍵をさしてロックを解除する。
ドアを開ける前に「オプンセサミ」と小さな声でつぶやいた。

294:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:29:47 5po9qWVU
酔った。
酔いすぎてしまった。
こんなに短時間で泥酔したことは記憶に残る限りほとんどない。
(もっとも本気で酔ったら記憶なんてなくなるんだけど)
隣にいる葉月がかわいすぎて、かわいいのにひとつも自覚のないところがまたかわいくて。
自分をごまかすためについ目の前のボンベイに逃げてしまった。
自分でも破滅的なピッチだと分かっていたけれど止められなかった。
店にいる男どもはみんな葉月を見ていた。
若くてかわいい新顔の女の子に勝るものがこの世にあるだろうか、いやない!(反語)
一見、いまどきの子みたいなのに身ごなしが鮮やかで端正な感じがする。
髪を明るい茶色に染めてるのも高校卒業したてというカンジでかえっておぼこい。
そのおぼこい子がほほを真っ赤に染めて恥ずかしがるところなんかたまんない。
からかって恥ずかしがらせてやりたくなる。
とか、いろいろ思うが、要はわたしはオヤジ趣味の上、葉月にめろめろなのだ。
あーもー、認めるよ!
わたしは葉月が好きなんだよ。
今まで寝た女たちの誰よりも葉月が好きですよ!
……でも、そんなこと言えるわけないじゃん。
葉月はマトモな人生歩んで王子様と結ばれるべきなんだから。
酒と女にだらしないわたしが手を出していいわけがない。

胃の内容物を道々吐き出しながら朦朧と家路をたどった。
ポカリスエットを差し出す葉月の手があたたかかった。
いいい子だよなー、と回らない頭で思った。
部屋につくころにはだいぶマトモになったけど、まだ頭の芯がしびれている。
ベッドに倒れこむ。
アルコールのもやが天井に向かって昇っていく。
天井はゆっくりと回転しているが胃が空になっているからかそんなに気持悪くない。
「武藤さん」
葉月に呼びかけられてキッチンのほうに首を傾ける。
「冷蔵庫の中のもの少しいただいていいですか」
「もちろんもちろん」
冷蔵庫のドアを開けた音が聞こえた瞬間、なにかガラスの砕ける音を聞いた。
「きゃ」
葉月の短い悲鳴を聞いて台所まですっ飛ぶ。
うん、大丈夫、アルコールはだいぶ抜けている。
ちゃんと体は動く。
狭いキッチンで葉月はグラスを落としてしまったようだった。
あわててガラスのカケラを拾おうとする葉月をとどめるために手首をつかむ。
その細さにどきりとして力が入りすぎてしまう。
葉月の細い体はわたしの腕の中に転がり込んできた。

295:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:30:44 5po9qWVU

思わず抱きしめてしまう。
あの夜の思い出が鮮明に浮かび上がる。
葉月の細く白い腕、うねる体、高い声。
欲しくて欲しくてたまらない。
でも、わたしには手に入らないんだ。
ずっと、見ているだけで。
なんか、鼻の奥がつんとした。
ぐっと腕に力が入る。
泣きそうだ。
「……武藤、さん?」
葉月の呼びかけに顔を見合わせる。
なにか冗談でごまかそうとした。
「もう、キスしてくれないんですか?」
心臓が止まりそうになる。
見てはいけないものを見てしまった。
恋慕にうるむ瞳と性欲にぬれるくちびるを。
理性は一瞬で蒸発する。
わたしはそっとくちびるを寄せた。


296:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:30:51 grtyHtvx
 

297:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:31:44 5po9qWVU

そっとくちびるが触れ合った。
それだけで軽い電流が流れたようにわたしの肩が跳ねた。
「葉月、かわいい」
短いキスを終えて耳もとでささやかれる。
そして、キス。
角度を変えながら、やさしく、甘ったるい、触れるだけのキスを何度も何度も。
合間にしびれるような言葉も何度も何度も。
スキスキ、ダイスキ、ハヅキカワイイ。
頭の中のどこかが溶けて、わたしはたまらなくなって武藤さんの襟元にしがみつく。
武藤さんはぐっとわたしの腰に腕を回した。
「もう、ガマンしないよ」
何を? と問いかけようと口を開きかけたところで暖かいものが進入する。
武藤さんの舌はわたしの舌先をつつき、からませる、歯列の裏をなめる。
わたしはしあわせできもちよくて何も考えられなくなる。
のどの奥で声にならないうめき声が浮かんで消える。
次々と涙が浮かび、転がり落ちる。
いつのまにか飲み込みきれない唾液もくちびるの端からこぼれてあごから落ちる。
腰に回されていたはずの手もわたしの腰から肩甲骨にかけてを何度もなぞりあげている。
背筋に甘いさざめきが広がりもう立っていられない。
「あっ」
くちびるを解放されてほっとするのもつかの間、首筋に軽く歯を立てられてわたしは悲鳴を上げた。
武藤さんの足元に崩れ落ちてしまった。

「ベッド行こ」
手を引かれた。
一緒にベッドに腰掛ける。
キスしながら。
正直、ものすごくときめいてしまった。
そのまま深いキスをされる。
だんだん激しく、酸素が不足して頭がくらくらする。
武藤さんの手は体中をはいまわる。
腰をなでられて、あごを支えられ、胸をもみしだかれ、ブラウスのボタンを外されて。
深いキスをやめたくちびるは耳たぶをかみ、くびすじをなめ、胸の頂点を転がす。
武藤さんは何度も名前を呼んで、スキだと言ってくれた。
わたしも何回もスキ、スキと応える。
ムトーさん、スキ、ダイスキ、ズットイッショ。
わたしの体はじくじくと粘液を吐き出す。
甘いため息が止まらない。
あまりに甘すぎて、遠く聞こえて、コレはほんとにわたしの声なの?
もう体を支えていられない。
わたしはマットレスの上に背をつけた。

「ね、服脱ごうか」
わたしのうえにおおいかぶさった武藤さんが耳元でささやく。
表情は逆光になって見えないけど吐息混じりの声は興奮を伝えてくれる。
わたしはだまったままキスを返す。
まず、武藤さんが勢いよくいつもの服の前を開ける。
黒いブラジャーと白い肌とのコントラストが強くて眼の毒だ。
武藤さんはやっぱり大人だ。
自分で肩に引っかかっただけのブラウスを脱ぎ、ずり上がったブラジャーも外す。
わたしの下着は綿のパステルカラーで子供っぽい。
シャワー浴びてないから恥ずかしいけどカーゴパンツも下着も脱いだ。
もう下着は下着の意味を成してなかったから脱がしてもらうなんて恥ずかしすぎる。
こっそり小さくたたんで他の服の隙間に押し込んでみる。
不意に照明が常夜灯だけになる。
シルエットになった武藤さんに抱きすくめられる。
素肌同士の触れ合う感触は鳥肌がたつほど気持ちよかった。


298:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:34:24 5po9qWVU
夢中になって葉月の体中にキスを落とした。
肩や背中、おなかやつまさきにも。
素肌を触れ合わせ、キスを体中にしても、まだキスをしていないところがあった。
「お願い、足開いて」
ひざに指をかけると、手の動きに逆らわずに羞恥にふるえながらゆっくりと体を開いてくれた。
「すごいよ、葉月」
薄闇の中で蜜をたたえる箇所を見て、わたしは興奮を抑えられなかった。
考えなしに襲い掛かりたくなるのを抑えるために奥歯をかみ締める、深い呼吸をひとつする。
そっと開いてみると内側に溜まっていた体液が一筋、ゆっくりとこぼれおちる。
ゆっくり口を寄せる。
葉月の味、大きくなめ上げ蜜をすする。
隠微な水音が予想外に大きく響く。
「んっ、ふっ」
葉月のこらえようとして、こらえきれないかわいい声。
体液を残らずなめとり、すすりあげるが、蜜は次々あふれてくる。
膣口に直接舌を差し込むとさらにとろりと体液がこぼれ落ちる。
その合間も葉月の吐息が聞こえる。
もっといい声が聞きたくて、そのまま固いしこりを舌先にとらえる。
「あ、あんっ」
はっきりした悲鳴と跳ねる腰。
蜜にまみれた核を追いかけ、舌先ではじき、吸い上げる。
逃げようとする葉月の腰を両腕で抱え込む。
葉月の核を包んでいる膜をゆっくり舌でめくりあげてから全体を大きなストロークでなめる。
「はっあ、ああっ、武藤さん、ん、んっ、いやあっ」
葉月のかわいい声に駆り立てられ、ピッチを早くしながら舌を押し当てる力を強くしていく。
「あ、あーーっ」
ひときわ大きく背をしならせると、マットレスに葉月は沈み込む。


299:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:35:35 5po9qWVU

体がだるくて仕方ない。
それでも、恥ずかしいからせめて下着はつけようとベッドを降りかけた。
「ダメ」
武藤さんに腕をつかまれる。
「まだ、どこにも行っちゃダメ」
勢いよくベッドに引き戻されて抱きしめられる。
胸と胸とが触れ合って、思わずぶるっとふるえてしまう。
「葉月はホント、敏感だよね」
ワイングラスを持つようにあごを持ち上げられる。
顔がかっと赤くなる。
軽くキスされるだけでくちびるから甘い息がもれてしまう。
「もー、かわいーんだからー!」
ぎゅっと抱きしめられてアタマをくしゃくしゃされる。
そしていたずらっ子の目からふいに真剣なまなざしに変わった。
「ひとつお願いがあるんだけど」
まさか、また今夜もなかったことにしてください、とか言われるのかと思わず身構える。
「なまえ、呼んで」
「武藤さん」
「そうじゃなくて、あの時みたいに」
わたしの最後の殻がパリンと割れる。
「……葵さ、ん、んっ」
言い終わる前に甘いキスでふさがれた。



300:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 19:42:31 5po9qWVU
おわりです。
初めて二次創作書きました。
書き込んでみると構成のひどさが分かるもんですね。
職人さんって、すごい。
勉強になりました。

これはミステリーサークル出現あとの話として書いています。
たぶん、このあと2回戦3回戦してるとしてるはず。
ハセガワの背後、醗酵蔵でふたりで爆睡してるのは夜の生活が激しいからだと
邪推しています。

301:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 20:32:54 mHpArlxk
>>300
乙!
やっべ。ニヤニヤが収まんねぇw

302:名無しさん@秘密の花園
10/01/06 23:18:30 uQ9WDOYh
素晴らしいものをありがとう!
最高ですた

303:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:42:06 tgqZeR6V
>>301
>>302
ありがとうございます。
やっぱり、反応いただけるとうれしいものですね。
調子に乗ってさっき ささっと書き上げたのをあげてみます。
ストーリーとかなくてやってるだけですが。

304:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:43:19 tgqZeR6V

葉月のくちびるが首筋をかすめる。
ぎゅんと脳天まで電撃が走る。
「もー、いらずらしちゃだめだってばー」
背中にまわされた葉月の腕を笑いながらはがす。
わき腹をくすぐると明るい笑い声がかえってくる。
1回戦こなしてわたしたちはまだベッドの中にいる。
「だって、葵ちゃんにもヨくなってほしいもん」
「えー、気持ちいいよー」
「するだけでいいの?」
ほんとに不思議そうな顔をしてるから耳元でうんといやらしくささやいてやる。
「声聞いてるだけでめちゃ濡れるし」
「!」
「イってるの見てるだけでイってる感じ」
「……」
「だから、うんとエッチになって乱れてよ」
ポカスカ殴られるかと思ったけど、顔を真っ赤にしてくたっとしている。
「葵ちゃん、エロすぎるぅ……」


305:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:44:44 tgqZeR6V

顔を覆ってあらぬほうを向いてる葉月の姿でなんか灯がともる。
なんだか、吐き気に似た甘酸っぱいものがのどの奥にひっかかる。
ため息ひとつ。
「葉月ぃ」
顔をおおっているのを手首をつかんでどかして頬にキスを軽く落とす。
「そんな顔されたらガマンできなくなる」
葉月の細い体を引き寄せ、くちびるを思う存分むさぼる。
声にならないあえぎ声が葉月ののどの奥で消える。
わたしも首筋に焼けた金属を当てられているような狂った熱に浮かされる。
いつものように体を開かせ舌をはわせようかと思ったが、ふと試したいことを思いついた。
それはうまくいけば葉月の欲もわたしの欲も満足させるもの。
「葉月、体起こして」
力の抜けた体を引き寄せる。
あとは承諾なしに葉月の片足を左肩に担ぎ上げる。
「な、んあっ、葵ちゃあん」
抗議に耳を貸さずふくらはぎにキスをひとつ。
わたしも右足を葉月の肩に深くかける。
お互いの敏感なところが音を立てて重なった。
「んんっ!」
くぐもった声は二人から同時に出た。


306:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:46:03 tgqZeR6V

「ねえ、葉月。わたしをイかせてよ」
ささやいて、手本のつもりで腰を軽くゆする。
葉月は呆然とした顔でわたしを見つめている。
「ダメかな?」
ゆっくりリズムを取って腰を使うとじーんと快感が頭の芯を伝っていく。
「ねえ」
「ダ、ダメじゃないよ」
葉月は快感に負けないようにおずおずと腰をゆらめかせはじめた。
あまりにもその姿が扇情的で自分のギアがひとつ上がる。
お互いの吐き出した液体で水音が激しくなる。
ああ、スゴイ。自分の動きが葉月に伝わり、そのまま返ってくるような。
わたしの律動は葉月の律動、葉月の吐息はわたしの吐息。
何も境目がないようなひとつのぐちゃぐちゃな妖しい機械になったみたいで。
その機械の目的は……。


307:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:47:19 tgqZeR6V

まず、わたしから自壊した。
頭の中に何千もの爆薬が炸裂して世界が白くなり、体が果てのないフリーフォールに落ちてゆく。
壊れるための機械、互いを壊しあう機械、何度も再生し、終わらない機械。
わたしも葉月も何度も壊れた。
肩にかかった足にすがり、信じられないような声を上げた。
もうだめだと思っても葉月を見ると腰が自然に動いた。
悪い燃料が補給されるように。
なんなんだろ、これ。
快感に浮かされながら切なくて涙がぽろぽろこぼれる。
スキな子と溶け合える神聖さの反面、互いを快楽に突き落としあう汚れた喜びもある。
何がなんだか分からない。
うれしくて、悲しくて、気持ちよくて。
世界が全部、流れ込む。
わたしは何度目なのかわからないフリーフォールへと落ちていった。


308:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:48:21 tgqZeR6V

「……ちゃん、葵ちゃん」
ほっぺたをぴたぴたたたかれる感触で目が覚める。
一瞬、意識が飛んでたみたいだ。
葉月にぎゅーっと抱きしめられる。
「お、起きなかったらどうしようかと思った」
しゃくりあげる葉月の背中をたたいてやりたいけどイキ過ぎて指一本動かない。
声をかけてやりたいけど叫びすぎて声がでない。
「葵ちゃんがいなくなったら生きてけないよぉ」
ただ、暖かい葉月の体温を感じる。
「わたしたち、すんごく相性いいんじゃない?」と眠気に襲われながら思った。
……なんか、愛されるのっていいよね。


309:名無しさん@秘密の花園
10/01/07 21:55:59 tgqZeR6V
お粗末さまでした。
たぶん、前日投下したのの設定から2週間後くらい。
二人はやりまくってるはず。
きっと、皮膚の菌も同じになってますね。
なんか、この体勢でこんなにすごいとかアリエナイ気もしますが、
ファンタジーみたいなもんですよね。
きっと、ムトーの方がテクニシャンなんだと思います。

及川自慰とかムトー×ハセガワとかも書いてみたいです。

310:名無しさん@秘密の花園
10/01/08 03:30:52 GL3B0Zxk
GJ!
及川自慰もいいね
媚薬事件の詳細も読んでみたい

311:名無しさん@秘密の花園
10/01/08 20:49:32 yunh81E5
畜産眼鏡娘もぜひ!

312:名無しさん@秘密の花園
10/01/08 22:16:36 yunh81E5
ついでにラクロス娘x主婦連も!

313:名無しさん@秘密の花園
10/01/11 22:15:52 Ja+Ealpr
引き続き、武藤×及川です。
けっこう長いですがエロなし、チューのみです。
ちょっとシリアス。
オクトーバーフェストが舞台になります。

過疎スレですが淡々と投下していきたいと思います。

314:1/14
10/01/11 22:18:44 Ja+Ealpr

9月の憂鬱、10月の祭


なんで武藤さんは疲れないんだろう。
もう、朝の8時近い。

スクーターなら大学まで近いといっても始業の1時間前には起きていたい。
邪険に手を振りほどいてもわたしの腕をかいくぐって抱きつき、耳をなめてくる。
「もう、無理ですって!」
必死で逃げようとシーツを泳ぐがぎゅうと抱きしめられてる。
「葉月のいい顔見たいだけなのに」
なんて耳元でささやかれる。
これが8時間前ならわたしも応えたかもしれないけど今は無理。
1限目から必修の最難関課目、応用無機化学演習がある。
出席して講義を聴かないとあっという間にわけが分からなくなってしまいそう。
無理、無理、絶対無理。ダメ、ゼッタイ。
学生課の壁張りのポスターを思い出すまでもなくダメなものはダメ。
だって、こうして武藤さんにほだされて何回かサボっている。
こんなことしてたらA評価を取るどころか単位も怪しくなる。
わたしが頑として応じないので武藤さんは腕をほどく、ベッドの上にちょんと座る。
やっとあきらめてくれたかと思ったが
「葉っ月ちゃんのぉ! ちょっとイイ顔見てみたいっ!」
突拍子もない声で今ではめったに聞かない一気飲みをあおるコールの替え歌を始めた。
「そーれ、エッチ、エッチ、エッチ、エッチ、エッチ!」
大泥棒の子孫が主人公のアニメよろしく飛びついてきた。
わたしはにっこり笑って武藤さんの鎖骨辺りに足をかける。
「葉っ月ちゃーん」
わたしを呼ぶ声もあの派手な背広の男そっくり。
かけた足をおもいきり伸ばしてやった。
武藤さんはきれいにベッド下に転げ落ちる。
「そこで反省しててくださいね」
わたしの声は-273.15℃、つまりは絶対零度だった

315:2/14
10/01/11 22:20:55 Ja+Ealpr

自分の体液や武藤さんの唾液のこびりついた体を熱いシャワーで洗い流す。
柑橘の強い香りの泡を立てて全身をこする。
毎晩のように武藤さんの相手をしていて事後の匂いに鈍感になっているんじゃないかと不安になる。
ボディソープは外国産の香料の強いものに切り替えた。
本当は食品を扱うんだからフレグランス類は使わないほうがいいのだけれど。
そのうち長谷川さんに注意されるかもしれない。
小さなバスルームを出ると武藤さんがマグカップを持って殊勝げに正座していた。
「ミルク半分に砂糖2杯のホットコーヒーです」
おずおずと差し出すのでありがとうと受け取る。
数口すすって、さっさとツナギを着てから弁当を作る。
時間がないから今日はサンドイッチだ。
ちぎったレタスとハムを適当にマーガリンを塗ったパンにはさんでラップに包む。
作りながら同じメニューを口にする。
最後にいい感じにぬるくなったカフェオレの残りを一気に飲む。
カバンの中の教科書とノートを数冊差し替えて準備は終わりだ。
今日は実習があるからツナギにすっぴんやむなし。
ちらっと見ると武藤さんはさっきの姿勢から動いてない。
「カギ持ってますよね」
無言でこくこくうなずくので、軽くいってきますのキスをする。
「葵ちゃんもあんまりさぼらないでね」
「だ、大丈夫! 午後から出るから!」
なんか微妙な返答をされるが話している暇がない。
「いってきます!」
武藤さんをわたしの部屋に残して出かけることとした。



316:3/14
10/01/11 22:21:59 Ja+Ealpr

実習は思ったよりも時間を食わなかった。
7時くらいまでの拘束を覚悟していたのだけど、担当教官は「夕暮れ近いから」と5時前に解放してくれた。
1限目の演習は予習が効いたのかかなり理解できたし、予定のない時間が急に空いた。
いつもなら武藤さんにメールするところだけど今日はそんな気分にはならない。
スーパーの特売でもチェックするかなー、なんて考えながらも無意識に醗酵蔵に足は向かう。
やっぱり、わたしは武藤さんの顔が見たいんだろうか。
予想に反して醗酵蔵は空っぽだった。ただ、長谷川さんがクリーンベンチの前で継代培養の操作をしているだけだった。
「今日は長谷川さんだけなんですか?」
「先生は出張で大阪、美里、川浜の馬鹿二人はバイト、沢木は日吉酒店に行くって言ってたし、武藤のことはアナタのほうが知ってるんじゃないの?」
「いや、今日は連絡取ってないんで……」
「バカ亭主がなにかやらかしたってわけかしら」
「まあ……」
長谷川さんはわたしたちの関係を知っている数少ない人のうちの一人だ。
今のところは長谷川さんと二人きりということになる。
武藤さんの事を聞くチャンスかもしれない。
「あ、あの」
「話なら聞くけど、そのかわりそこのメモ通りに液体培地作ってくれない?」
「は、はいっ」
「オートクレーブの操作とか一通りは教えたわよね」
「はいっ」
以前、メモした手順書を見ながら作っていく。
意外なことに一番難航したのは必要な薬品を棚から出すことだった。
どういう法則で並んでいるのかがさっぱり分からなかった。
見かねて長谷川さんがひょいひょいと棚から出してくれたくらいだ。
なんだかんだで培地を滅菌器に入れてタイマーをセットしたのは7時にもなろうとしていたころだった。
「及川、ちょっと食べに出るわよ」
「え?」
「おごるからついてきなさい」


317:4/14
10/01/11 22:23:03 Ja+Ealpr

学食に連れて行かれるかと思ったらタクシーですごいところまで連れてこられた。
「校内で話してたら誰が聞いてるか分からないでしょ」
「すみません……」
学生のわたしには身分不相応のイタリアンレストランの個室で長谷川さんと差し向かいになる。
ツナギ姿が恥ずかしくて仕方ない。
「まあ、どっちにしろ今夜はこのお店に来ようと思ってたから連れができて良かったわ」
ウェイターにてきぱきとオーダーを通してわたしに向き直る。
「で、どうしたって?」
「ちょっと話しづらいんですが……」
わたしは今朝の顛末とそれに類した武藤さんの行動について話した。
「本当にこの人でいいんだろうかと思えちゃうんですよ」
「……」
「大学にもマジメに行かないし、勉強してるとこなんて一回も見たことないんです」
「……」
長谷川さんは眉間にしわを寄せたまま不機嫌そうな顔で相槌もうたずに黙って聞いている。
前菜の盛り合わせがきたのでフォークでつついて口にいれる。
「おいしい……」
長谷川さんはあたりまえのように口にしているけど、これは本当においしい。
かかっているオリーブオイルが油と言うよりも絞りたてのジュースのようだ。
わたしが夢中になって食べ終って目を上げると長谷川さんの見たこともない笑顔があった。
そして、口にした言葉はあまりに予想外だった。
「それって、武藤が夢中になってあなたのこと愛しているだけじゃないの」


318:5/14
10/01/11 22:24:08 Ja+Ealpr

驚きで口がきけなくなっていたら、さらにきっぱりと断言された。
「武藤はあなたに夢中なのよ」
パスタが運ばれてきた。
長谷川さんの話も驚きだけどパスタの味にも気を取られる。
きしめんみたいに平べったい柔らかいパスタにすっぱいトマトソースがからんでいる。
「だって、浮気してないもの」
あまりの根拠にむせそうになった。
発泡するミネラルウォーターをごくりと飲み下す。
「あの子、本当は浮気性なのよ」
「そ、それは知ってます。一緒に外出してもすぐにすれ違うきれいな人振り返るし」
思い出すだけで情けない気持ちでいっぱいになる。
「でも、本当に浮気しているわけじゃなくて、ウザくなるくらいくっついているんでしょ?」
「それはそうですが」
いつのまにか長谷川さんはワインを飲んでいる。
「昔はもっとひどかったのよ」
長谷川さんいわく、武藤が真面目に講義を受けているなんて話は聞いたことがない、
常に不特定多数の女性と付き合っていた、
アルコールの匂いのしない武藤は武藤じゃないとまで言われていた、等々。
「もっとも、アルコールの匂いだけじゃなくて女物の香水の匂いも日替わりだったけどね」
と長谷川さんはくすくす笑う。
正直、性格破綻者なのかと思ってたわ、とまで言い切った。
「いいとこなんてないじゃないですか」
「それがね」
わたしのグラスにもワインを注いでから自分のグラスにも注ぐ。
飲めません、と首を振ると飲みなさい、とにらまれた。
「なんで武藤がミス農大なのか分かる?」
「……美人だからなんじゃないですか」
「うちの大学は美人なだけじゃミスにはなれないのよ」
「……」
「それなりに大学に貢献していて人間的にユニークじゃないとなれないの」
返事に困ってワインを口に含んでみる。
すごい。
何の知識もないけど、これがとてつもなく良いワインだということが分かる。
土と花とスパイスと蜂蜜の香りがする。とてもブドウだけでできてるとは思えない。
「しかも、2回生でミスになるのって特例なのよ」
アルコールが入ったせいか長谷川さんの口ぶりが陽気になっている。
「半年と言わず、あと3ヶ月も付き合えば武藤のいいところが分かるわよ」
「それが結論ですか?」
「そう、ダメ亭主の武藤を広い心で包んでやってちょうだい、というのがお願いよ」
そして、食事がまずくなるからこの話は終わり、と宣言された。
武藤さんのことをずいぶんかってますね、とつぶやくと長谷川さんはやたらと不思議そうな顔をした。


319:6/14
10/01/11 22:25:14 Ja+Ealpr

高級店というのはホントに高級なのだということが分かった食事だった。
長谷川さんの不思議そうな顔の意味は分からないけれど、ずいぶん気を使ってもらった。
お土産にグリッシーニとかいろいろ持たせてもらってしまった。
店の前に横付けされた車はハイヤーでまた高級さに驚いたけど、行く先同じなんだからと押し込まれた。
長谷川さんはずいぶんと陽気で突然、肩に腕を回された。
「生肉好き?」
「……え?」
耳がおかしくなったのかと思った。
「ねえ、及川の名前は?」
「葉月……です」
長谷川さんの目がすわっている。
「かわいー名前だねー」
「そっ、ですか」
冷や汗が流れる。
「耳、かんでもいい?」
「む、無理です」
わたしの膝頭にきれいにネイルされた爪が食い込みがりりとひっかかれた。
「にゃーーーーはっはっはっ!」
高らかに笑うとがっくりと眠り込んだ。


320:7/14
10/01/11 22:26:57 Ja+Ealpr
ハイヤーの運転手は行き先を熟知しているようで、ちゃんと部屋まで送り届けてくれると静かな声で約束してくれた。
長谷川さんのマンションの前にわたしの部屋から周ってくれるという。
うすうすは気づいてはいたが長谷川さんの酒癖は強烈だ。
あり得ない。
パッタリ眠り込まれたのが不幸中の幸いだろうか。
「長谷川さん、起きてください。今日はありがとうございました」
ぐずりながら目を覚まし、また、耳かんでもいいー? とか言いはじめる。
うっわ、本当にたちが悪い。
車にいてくださいというのについてくる。
長谷川さんともつれ合い、耳をかじられるのを避けながら、部屋のカギを開けたら暗闇から人影が駆け寄った。
何だろうと確認する間もなく左の頬に衝撃が走った。
真っ赤な顔で涙を浮かべている武藤さんだった。
キーホルダーからカギを引きちぎって投げつけられた。
靴を突っかけ、走り去る後姿を見つめるうちに頬がじんじんと痛み始めた。
「ごめんなさい」
長谷川さんが真っ青な顔をしていた。
「わたし、以前に武藤と付き合ってたことがあるの」
わたしは恐ろしいほど冷静で、さっきの長谷川さんの不思議そうな顔の理由をはっきり理解することができた。
それと、なぜ武藤さんがあんな顔をしていたかも。
「あの子、誤解したのね」
左の頬がうずくのは平手打ちされたからなのだとも。
「本当にごめんなさい」
酒気の抜けた青白い顔で長谷川さんは何度も謝罪した。


321:名無しさん@秘密の花園
10/01/11 22:36:49 Ja+Ealpr
本日、ここまで。
明日に残りを投下します。

エロも書きたいのですが武藤がはなちゃんと同衾したと知ったら及川は心穏やかではなかっただろうな、とか。
最初が最初だからやってるだけで、お互いの魅力とか付き合い方に対して思慮が浅いだろうな、とか。
そういうこと考えてたらこんな話になりました。
ここから収拾つけるの大変でした。

次はエロイの書きたいです。
それでも主婦連×ラクロスっ娘は無理。
シチュエーションは作れますけど書いてて萎えます。
(10行書いて放棄)
スタンダードに及川自慰か
武藤、宏岡二人がかりで長谷川を攻める3Pとかの方が楽しそうです。

322:8/14
10/01/12 19:53:56 ET35GZrq

そう遅い時間でもなかったので長谷川さんが応急処置をしてくれた。
頬に冷えぴたを貼りながら昔話をしてくれた。わたしはずいぶん武藤さんのことを知らなかった。
眠れないかと思ったが昨晩に武藤さんが離してくれなくて寝不足だったためか夢も見ずに眠り込んだ。
なんて長い1日だったんだろう。
それからのわたしはロボットだった。
時間通りにカリキュラムをこなし、醗酵蔵でデータ整理をし、スーパーでお買い得品を買って自炊した。
武藤さんが毎晩のように上がりこんでいた時にはできなかったことだ。
睡眠もちゃんと取れるし食事もしてる。なのに体重は増えなかった。
武藤さんに宛てる時間が浮いたぶんは研究室での自主勉強にまわした。
長谷川さんは何か言いたげだったけど、機器類の取り扱い説明をしてくれた。
武藤さんも研究室にいたけどお互いに口をきかなかった。
1回、勇気を出して電話をしたけど着信拒否だったから。
そのうち、武藤さんには夢中になれることが見つかった。
小さな女の子を追っかけてヒッチハイクで日本の果てまで行ったという。
思い出の醗酵蔵で一緒に寝てたという話も沢木君から聞いた。
なんか、全部終わっちゃったんだな。
夏の恋は秋まで持たないのはホントなんだなと、バカにしていたラブソングがわたしに染み付いた。
もうジャケットを着ないとスクーターでは通学できなかった。


323:9/14
10/01/12 19:55:02 ET35GZrq

もう、ほとんど液状になったもろみを指先ですくってなめてみた。
もう甘みがうすくなってきてアルコールの香りが強くなっている。
完成まではもう一息だ。
とりあえず、足手まといながらも肉体労働することでいろいろ忘れることができた。
とにかく、体を動かして、参考書を読み、研究室のPCをいじり続けるのは何も考えずに眠るため。
何回目になるのかわからない櫂入れのとき、見たこともない顔の武藤さんが醗酵蔵に入ってきた。
疲れた顔をしているのにはつらつとしてエネルギーが体中にみなぎっているかんじだ。
あの真っ黒で豊かな髪をアップにして、いつもよりも大またで歩く武藤さんはかわいらしく、きれいだった。
なんで、こんな姿を目にしなきゃいけないのかと涙がにじんだ。
とりあえず、作業を終えデスクに戻って今日の天候や気温湿度、もろみの状態などをデータ化した。
実質、事務周りのことは長谷川さん一人でまわしていたのでこの研究室のデータベースはぼろぼろだった。
やることは山のようにある。紙の形で残っているデータを過去にさかのぼってデータ化するのが手始めだ。
いつかは就職するだろうわたしにはエクセルやパワーポイントを覚えられるのはありがたかった。
長谷川さんの望む形を先回りしてデータを加工することも日々の目標だった。


324:10/14
10/01/12 19:55:57 ET35GZrq

「武藤、ごはんにしな。朝からずっと電話しっぱなしじゃない」
武藤さんの新しい目標は大学で大きな地ビール祭りをすることだ。
そんだけ加納さんが好きなんだな、と胸の奥が痛くなる。
学食に出かけた武藤さんの代わりにみんなで手分けして各企業に電話を始めた。
でも、この手のことが苦手な沢木君は早期離脱、川浜さんも向いてない。
結局、主戦力は長谷川さんと美里さん(意外にやる気ある)、わたしの3人だけになってしまった。
あまり非効率なことはしてられない。
FAXするためのまとめを作って流してから個別交渉に入ったほうがやりやすい。
簡単なチラシをデザインして、地ビール蔵の一覧をステータスごとに分類してから電話しなおした。
こういう作業はけっこう苦にならない。
武藤さんの心がわたしにないことが分かっていても「かかわっていたい」という未練な心は消えないから。
明日の各人の予定表も作る。
櫂入れに休みの日はないから沢木君にしてもらう、長谷川さんにも個人の研究があるからあまり時間を割いてもらうことはできない。
とにかく、時間がない。
残り時間の少なさと必要とされるだろう作業量の膨大さに戦慄する。
出展可能なビール蔵の持ち込み手段や数量をまとめていると校内放送のチャイムが鳴った。
「農志会よりおしらせです」
なにやらガタガタとイスらしきものを引く音が聞こえる。
「えーと、こんにちは、武藤葵です」
もう、懐かしさすら感じるダイスキな人の声を聞く。
武藤さんは今、夢中になってる小さな女の子の話をし、オクトーバーフェストがどんなに楽しいか、人を楽しませることができるかを熱っぽく訴える。
ああ、そうだ、わたしは武藤さんのこういうところが好きだったんじゃないか。
一人で地球の裏側から陸路で帰ってきた臭くてカワイイ人。
長谷川さんに命じられて武藤さんのためにおにぎりとお味噌汁を作ったときからずっと武藤さんを見続けてたじゃないか。
スピーカー越しの声を目をつぶって、自分を抱きしめながら聞く。
「……この学校のみんなの力を見せつけてやろう!」
放送が終わるのと同時に地鳴りのような歓声が学内に響きわたった。
なぜ、武藤さんがミス農大なのかをわたしは正確に理解した。


325:11/14
10/01/12 19:57:01 ET35GZrq

それからは嵐のようだった。
醗酵蔵が第二事務局のようになって農志会文化局の人たちとホームページ作成やチラシ作りを一緒にした。
印刷屋から刷り上ったばかりのチラシをかかえて、駅のトイレで着替えてチラシをまいた。
放課後はラクロス部の女の子たちと一緒に行動して、夜は文化局で眠った。
とにかく、できるかぎりの宣伝活動をした。
教授に手伝ってもらってマスコミにもプレスリリースを送った。
いろんな人と知り合った。いろんな仕事を教わった。
祭の前日、ちょっとでも笑って欲しくて空になったダンボール箱を武藤さんに見せた。
やせたほほを向けて驚いた顔をしただけだったけど。
この2週間でわたしの気持ちは固まった。
わたしからは武藤さんを嫌いにはどうしてもなれない。
ただ、研究室の先輩、後輩として付き合えればいい。
昔みたいなお付き合いができるわけじゃないけど、それは仕方ない。
笑ってくれなければわたしが笑えばいい。
ただ、後輩として武藤さんを見続けていられればいいんだ。


326:12/14
10/01/12 19:58:29 ET35GZrq

このところでずいぶん着慣れた民族衣装を身に着ける。
もう搬入の済んだビールのセッティングは男子学生に任せて、パレードのルートを再確認、最終説明する。
それぞれが持ち場につく。わたしも山車の上に上がる。
黒いマントを身にまといミュンヘナー・キンドルになった武藤さんはこの世のものでないように、冴え冴えと美しかった。
瞳はこの世の何も映していないようにうるみ、目を離せなくなる薄い微笑はわたしの魂を奪ってゆく。
鐘が鳴る。馬上から檄が飛ぶ
行こう、みんな。お祭の始まりだ。
マーチングバンドの音がわきあがり、ゆっくりとパレードが動き始める。
驚くほどの観衆が学内の道路の両側にびっしり立っている。
歓声に応えて手を振る。フラッシュがまるで花火のように次々とたかれる。
自分の仕事が実ったことを実感する。自然に笑顔になった。
いつまでもパレードが終わらなければいいのにと心から願った。

わたしは人手の薄い「かのうファーム」のお手伝いをすることにしていた。
沢木くんと加納さんがふたりでぴょこぴょこと注文を取って回るさまは本当に愛らしかった。
わたしでもまとめてハグしたいような気持ちになる。
武藤さんが好きになるのも無理ないな。
お客さんもみんな笑顔になる。
あの恐っろしい主婦連まで穏やかにビールを楽しんでいる。
わたしみたいに小さなモラルで縛るよりも武藤さんはもっと自由にしていたいんだろう。
ああ、いろいろ終わったんだな、と泣きたいような笑い出したくなるような、胸は空っぽだけど清々しいような不思議な気分になった。
体は注文に応えてすいすい動いた。
なんと、昼過ぎには完売できたのでちょっと時間ができた。5時起きなのでさすがに疲れた。
文化局で仮眠して撤収に備えようかと思った。
歩き出して沢木君に呼び止められた。いわく、
「武藤さん、実はインフルエンザにで寝込んでるんだよ。朝は無理してて……」
あの、冴え冴えとした青白いほどの顔色はインフルエンザのためだったんだ。
その後、続く言葉も聞かずに醗酵蔵へわたしは駆け出した。


327:13/14
10/01/12 19:59:50 ET35GZrq

駆けつけたはいいが、今の顔で会っちゃいけない。
醗酵蔵の前で深呼吸してわたしは笑顔を作った。
武藤さんは布団に包まり半身を起こしてだらしない顔で教授と一緒に笑っていた。
朝のあの魔性の香りがするほどの麗人とは思えない。
ビールの香りのするパン粥をすすりながら祭の状況を聞いてくる。
「そりゃあ、こっぴどく楽しんでまス」
安心させるための誇張ではない。
教授はパン粥の効能を謳い始めるがそんなのはどうでもいい。
武藤さんが後輩のわたしに笑顔を見せてくれているという事実が一番大切だった。
教授は続ける。
「あとはこの祭をしめくくる言葉が欲しいがそれの適役は誰だろう、武藤君」
教授はそっと蔵を出て行った。
祭の喧騒が遠く聞こえる。二人だけ残されて沈黙が重い。
何か言わなきゃいけないはずなのにノドがひりついて声が出ない。
「ごめんね」
武藤さんは泣きそうな顔をしている。
「長谷川さんからいろいろ聞いたでしょ? 黙っててごめん」
「……いや、もういいんです」
「良くないよ!」
布団から身を乗り出し腕を痛いほどつかまれる。
ああ、この場で白黒はっきりつけてさよならされるのか。
偽りない言葉をつむぐ。
「わたしはただ後輩としてやっていければいいんです」
「それじゃイヤだよ!」
激昂する武藤さんに抱きしめられる。
「そりゃ、わたしは女癖悪くて酒飲みだけど」
くたくたの寝巻きから汗のにおいがする。武藤さんの体臭に包まれてくらくらする。
武藤さんに熱があるせいかひどく暑く感じる。
振りほどきたいのに離れられない。
「こんなに好きなのに!」
熱くて激しいキスをされる。
武藤さんの舌は純粋な熱のかたまりのようで火傷するかと思うほど熱かった。
体が離れる。
わたしは息を整えて尋ねる。
「だ、だって、加納さんは?」
武藤さんは本当に不思議そうな顔をした。


328:14/14
10/01/12 20:01:07 ET35GZrq

それからの小1時間はぐだぐだだった。
泣いたり怒ったりを繰り返した。
言いたいことを全部吐き出した。
もうわたしのことなんてどうでもいいんじゃないの? 加納さんのことだって、と。
わたしは泣きつかれて虚脱して武藤さんの熱い体にもたれかかる。
「それでもスキなのに……」
「だから、わたしもこんなに好きなのにって言ってるんだよ」
ちょっと信じられないけど加納さんとは何にもなかっという。
「やっちゃってもいいや」と思ったらしいができなかったと告白される。
それもどうかと詰め寄るが「葉月の顔が浮かんでできなかった」とあの顔で言われると参ってしまう。
とにかく、武藤さんは過去の女癖や生活態度の悪さを暴露されて絶対嫌われたと信じていたとか。
その確信の理由が甘えてくれなくなったからだというのがビックリだ。
平手打ちされてカギを投げつけられて甘えたりできる人はいない。
そう言うと土下座せんばかりのいきおいで謝られた。
「だって、長谷川さんと仲いいしさー、学祭前にはちゅーかなんかされてるしさー」
子供っぽく口をとがらせる。
こんな表情を見るのは久しぶり。
「長谷川さんとはなんでもないんだってー」
「それでもやきもちやいちゃった」
手をすっと伸ばしてわたしの頬に手のひらを当てる。熱い。
「葉月がかわいいのが悪い」
「ばっか」
今度は熱いけど甘いキスをした。
「ところでさ」
「うん?」
「締めくくる言葉は葉月に頼みたいんだけど」
「わたしに?」
「そう、あれ着てさ、みんなの前で思ったことを一席ぶってやればいいから」
壁には武藤さんの着てたミュンヘナー・キンドルの黒いマントがかかっていた。
「なんなら、着替えを手伝ってもいいけど」
「ばっか」
今度はわたしからキスをした。

衣装を引き継いで馬に乗る。
ひときわにぎやかなブースの沢山の人の中に醗酵蔵のメンバーが見える。
手綱を引いて馬を止め、一呼吸置いて声を張り上げる。
「みんな、楽しんでる?」
ビールジョッキがわたしに向かっていっせいに持ち上げられ歓声が爆発する。
これが武藤さんの見る景色なんだ。
世界を共有した喜びで頭がくらくらした。




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