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907:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイWW 4b44-gafA)
19/12/09 02:30:15 byPelFG+0.net
コピペ


「─こういうのってさ、健康体な私が漕ぐべきなんじゃない?」
「いやいや、今健康体なのは私のほうじゃん? 任せとけって、よんちゃん」
後部の荷台に腰掛けたよんちゃんは「そもそも2人乗りってありなのか?」と呟きながら、私の腰に腕を回す。そのあまりにもやせ細った手首に気づかない振りをして、地面を強く蹴り込んだ。

海に行きたいなぁ。そうボヤくよんちゃんを誘って、自転車に飛び乗った。2人乗りをしたのは初めてかもしれない。ワルだ。本物のワルだ。よんちゃんにそう言うと「程度が低いなぁ」と呆れられた。
ペダルを踏み込むたびに、足が重くなる。息が切れる。生唾を飲み込んで、また大きく息を吐く。
「ねごちゃん、大丈夫?」
よんちゃんが後ろから心配そうに声をかけてくる。「だ、だいじょうぶらよ」とたどたどしく返すと、「交代しようよ」と言ってくるので、ムキになって大声を上げた。
「大丈夫だって! なんならあの坂だって登り切れるよ!」
道は一度下った後、踏切を渡ってから緩やかな登り坂となっている。あの丘を越えれば、青く煌びやかな大海原が見えてくるはずだ。
「いや、あの坂を2人乗りでは絶対無理だって!」
「いや、助走つければいけるよ。見てな─」
私は勢いよく漕ぎ出して、下り坂を猛スピードで駆け下る。風を切る。景色が、音が、後ろに後ろに遠のいて、そして─。

警報が鳴り響いた。
両手のブレーキレバーを強く握り締める。耳に障る錆びついた金属音を立てて自転車が停止した。
無常にもスズメバチ色の遮断機が降りてきた。カンカンと無機質に響く警報を聞きながら、目の前の坂をにらみつける。下唇を突き出して唸った後、「まあひと休憩ってね」と努めて明るくよんちゃんに話しかける。
焦らすように赤光が点滅する。右ハンドルを人差し指でトントンと叩く。いつになったら電車はくるんだ?
「─ねごちゃん」
警報音にかき消されそうな、よんちゃんのか細い声がした。
「なに!?」
大声で返事する。線路の右奥から電車が見えた。なにをちんたら走ってるんだ─

「私たち、もう、終わっちゃったのかな?」

カンカンカンカン。

「─っバカ! バカヤローだよ! よんちゃん!」
寂しく放り投



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1723日前に更新/239 KB
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