産経抄ファンクラブ第 ..
759:文責・名無しさん
20/06/07 09:43:47.99 YwR7nC2E0.net
産経抄 6月7日
言葉はときに甘い響きを人の胸に残し、ときに残酷な素顔をのぞかせては人を傷つける。「言葉には朝と夜とがある」。作家の寺山修司はこう記し、美しい響きを持つ朝の言葉として「希望」の2文字を賛美した。
▼寺山はしかし、こうも書いている。「人類が最後にかかるのは、希望という病気である」。フランスの作家、サンテグジュペリの言葉という。
目覚めに口ずさめば甘く、失意の底ですがれば味わいは苦い。複雑な使命を背負わされた言葉なのだと、いまにして思う。
▼愛(まな)娘の横田めぐみさんを北朝鮮にさらわれた両親にとり、「希望」はどんな響きを帯びていたのか。
拉致と知らず無事を祈り続けた約20年と、救出を訴え続けたこの二十数年は、身を切り刻むような時間との戦いだったに違いない。父の滋さんが87歳で亡くなった。
▼めぐみさんは小学校卒業の折、謝恩会でシューマンの『流浪の民』を独唱した。歌を収めたカセットテープを両親は大切にしてきたという。
〈可愛(めぐ)し乙女舞い出でつ/なれし故郷を放たれて/夢に楽土を求めたり〉。予言めいた歌詞の痛切極まる響きに言葉を失う。
▼45歳を迎えた滋さんの誕生日に娘は櫛(くし)を贈り、次の日に姿を消した。父は実名を公にして北の非を鳴らし、国民の理解が進まぬ中で署名活動に立ち、各地での講演は1300回を超えた。
普通の父として生きられたはずの半生も再会の願いをも奪った北の罪である。
▼寺山の詩を思い出す。〈時計の針が/前にすすむと「時間」になります/後にすすむと「思い出」になります〉。
髪を櫛でとかすとき、父の脳裏によぎったのは「思い出」と呼ぶには残酷な歳月の仕打ちだろう。言葉を“言の刃(は)”に変えた、赤い血の通わぬ者が海の向こうにいる。
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